読む人の琴線に触れる、良い文章の要素とは。
身近な素材を大切に、読者の心のなかに風景を描かせ、時間の流れを感じ、声が聞こえてくるような文章のこと。
生前の父の姿がいきいきと描写されているので、つい最近、亡くなられたのかと読み進めると、3回目の「父なき父の日」を迎えるという。
朝日新聞「ひととき」より
読者に想像しやすい身近なものに素材を探す
お父様が亡くなられる前の数ヶ月を一緒にタイで過ごしたとある。きっと、お父様にとっても楽しい最晩年だったのだろう。
タイの三輪タクシー「トゥクトゥク」に、一緒に乗った思い出などを素材に選んでいないところが、読み手に共感を起こさせるポイントだろう。
夕方のウォーキングでふと見上げた空に浮かんだ雲の形が父の横顔に似ていて思わず立ち止まって手を振りそうになった。「おーいお父さん、久しぶり」。父が好きだった水色の空が見る見るうちにオレンジ色に染め上げられ、「元気にしてるかい?」と父がほほ笑み返したような気がした。
この部分を読んで、河原の土手なんかで見上げた大きな暮れゆく空を思い起こした読者は多いだろう。
誰にでも経験のある、身近に存在するものほど文章をつくる素材としては良いだろう。情景を思い起こすスイッチは身近で、ありふれたものほどいいと思う。
かけがえのない美しい習慣
「タイで一緒に暮らした日々は毎朝、父が緑茶をいれることに始まった。」
「調理はその料理を食べる人の喜ぶ顔を思い浮かべることから始めるんだよ」
お父様が行った言葉はいつまでも投稿者の心に残っている。
調理を始める前に、食べ始める時間や、食事前後の段取りを思い描く人は多いだろう。食べる人の喜ぶ顔を思い描いてから始める料理は、丁寧、繊細で「色彩に気を配った季節感あふれる」美しい食卓だろう。
ゴール(結果)から逆算して準備を始める人は多い。料理における最高のゴールは、やはり食べる人の笑顔以外にはないのだろう。
まとめとして
良い文章だな~!と感心して、スクラップしていました。実は、どう書いていいのか分からなくて困っていました。
ありがたいことに、私は父どころか、100歳になる祖父も健在です。
父のありがたみをじっくり噛みしめるようになる日々は、ずっと先になりそうです。
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