石炭火力発電、インフラをアジアに輸出することで日本が得られるもの

経済産業省が日本の石炭火力発電所を海外に売り込んでいると報道しています。以前の記事「環境都市インフラを輸出せよ」でも書いていますが、電子部品や家電製品、自動車などのコモデティと化した産業は価格競争力において新興国に競り勝っていくのが難しいです。それならば、高度に成熟した生活インフラを海外に輸出していくのが、日本の強みになっていくと思われます。

2013年7月4日「朝日新聞」より

2013年7月4日「朝日新聞」より

日本の石炭火力発電は世界一の効率

石炭火力発電と聞くと、どうしても二酸化炭素の排出量が多く、粉塵などの大気汚染物質も発生するダーティーなイメージがつきまといます。しかし、日本の石炭火力発電はそうとばかりもいえないようです。1970年代に起こった石油ショックで改めて自国に資源がないことを痛感した日本は、資源をより高効率に利用することを追及しています。また、1960年代後半から大気汚染による公害被害が、よりクリーンなエネルギーを求めるきっかけとなっています。

新聞記事中の表をみても、アジア各国の発電における「石炭火力」への依存度が依然として高いことが分かります。石炭火力は燃料コストが石油の4分の1と安価で、埋蔵量も豊富。急成長をしているアジアでは電力不足が経済成長の足を引っ張る状況になっていて、安定的な電力供給インフラを安く導入することができる石炭火力発電に注目が集まる結果となっています。

「二国間クレジット」と「メタン変換CCS」

1997年12月に京都議定書で示された温室効果ガスの削減目標があります。これまで効率を考えずに資源を利用してきた新興国と違い、日本は効率を重視して温室効果ガスの発生率も低く抑えてきました。すでに固く絞った雑巾を、さらに絞り上げるような努力を強いられています。
しかし石炭火力発電の輸出は、温室効果ガスの排出枠にとっても日本にメリットをもたらします。経済産業省はベトナム政府と「二国間クレジット」導入を大筋で合意しているようです。これにより省エネ技術を提供する代わりにCO2削減量を日本の削減分として算入することができます。

現在、研究中の技術に火力発電で発生したCo2を地中深くに封じ込めるCCSというものがあります。また、封じ込めたCo2にメタン菌を利用することによって、Co2をメタンに変換する技術が東京大学のチームで研究が進められています。
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メタンは燃焼するガスとして、発電に再利用ができます。まさに夢の技術といっても過言ではないと思います。

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