大前研一氏と考えた、仕事の再定義が少子化に歯止めをかける。

人口ボーナスによる経済発展は1980年代に終了したのでしょう。
以前「スマホが奪った雇用と産業」でも書きましたが、世界の産業構造はすっかり変わってしまいました。

旧態依然の雇用制度が存続する、日本企業と雇用者は、どうして苦しんでいるのか。
大前研一氏の著書、『稼ぐ力「仕事がなくなる時代の新しい働き方」』を読んで、この後の時代に必要なことを考えてみました。

大前研一稼ぐ力

少子高齢化でも若者の働き口は増えない

日本では少子高齢化が進んでいて、将来の働き手がドンドン失われています。
経済発展を(ある程度)遂げて、成熟した社会への移行期を迎えた先進国では、決まって出生率が下がります。加えて医療の発達や、食料の安定供給から平均寿命は延びて少子高齢化が一層加速します。

ただしこれは、日本にだけ限って起こったことではなくて、我々よりも先にこの問題に頭を悩ませた欧米の国々は多くありました。
これらの国の中から、ある一定の解決策を導き出した国もあります。これが計画的な移民の受け入れです。アメリカなどは、この典型例だということができます。アメリカは、これまでの白人主体の国ではなく、ヒスパニック系の人口が増え続けることによって全体の人口は増え続けています。

一方で、計画的な移民の受け入れをしていない日本では、今後人口がじりじりと減っていきます。最初は少しずつ減っていった人口は次第に加速度をつけて減少していくという予想がされています。今から十数年先の2030年では、年間約100万人ずつ人口が減少していくと推定されています。これは現在の相模原市全体の数よりも大きく、秋田県、富山県、和歌山県、香川県が毎年ひとつずつ失われていく規模です。
私が生きている間にも、こんな時代が到来するのかと思うとゾッとします。2020年には東京オリンピック開催が予定されています。そのわずか10年後の日本の姿です、皆さんは容易に想像することができますか。

人口が減少していくので、産業が育たないことが一因であるかもしれません。働き手の数は減少しているのに、新卒の就職率は芳しくありません。また、学生が希望する職種とのギャップや、実際に就職した新社会人と、雇用する企業とのミスマッチも大きくなっているように感じられます。一体どうして、このようなゆがみが生じるのでしょうか。

私は、育ててきた親世代の価値観を踏襲している大部分の若者達が、このようなギャップに悩んでいるためだと思います。企業に就職すれば、昨日と同じような仕事をこなして、毎月給与を受け取ることができる。さらには自分自身も仕事を通して成長し、自然に給与も上昇していくといった幻想を抱いてしまっていると感じます。実際の仕事の現場では、昨日と同じ仕事は増加した高齢社員で担うことができます。若い人材に求められていることは、社外や国外に目を向けて、新しい儲けの種を見つけ、育てることであると考えます。そこに、いちはやく気付くことができた現在の若者達は、残念ながら旧来の企業を飛び出して個人で起業したり、海外の企業で活躍する道を選択しているのだと思えてなりません。

止まらないグローバル化、仕事の再定義が欠かせない

インターネットによる情報の伝達スピードの向上と共有化の流れは、もはや止めることはできないでしょう。これを利用して、お金もアイデアも人材も、容易に国家という障壁を飛び越えてグローバル化しています。現在、国内に留まっている企業でも、社内の一部の仕事は海外にアウトソーシングしているケースも増えています。

海外に仕事をアウトソーシングする際に、もっとも注意したい点が、その仕事の定義です。日本企業は、この仕事の定義を明確にすることができずに、海外とのやり取りで軋轢を引き起こすことが多いとされています。

日本企業のホワイトカラー管理職たちは、それが曖昧なまま、集団で仕事をしているケースが多い。だから部下を自分の目が届く範囲の「時間と場所で縛る」20世紀型のマネジメントしかできていないのだ。
大前研一著、『稼ぐ力「仕事がなくなる時代の新しい働き方」』より

自分自身としても、あれは日本企業型の仕事の仕方であったのかと、今更ながらに気付かされる点が多い。
ある仕事を上司に指示されて、自分なりの解釈でその仕事を仕上げて上司のもとへ持ち込む。上司は、「あれが足りない」「これはポイントがずれている」とやり直しを命じる。そんなやり取りを二度三度と繰り返しているうちに、仕事の締め切りがきて、これをもって完遂ということになる。
欧米などでは、上司が部下に指示を出す際に、明確な仕事の目的・クオリティ・期限・最低限添付する資料などを示されるという。これが日本企業の上司には往々にして欠けていて、先ず部下に考えさせる。出来上がったものにダメ出しをして練り上げていくというスタイルをとっていることが多い。

クオリティや納期など仕事の仕様に関するSLA(サービス・レベル・アグリーメント)が具体的に定義されなくては、目の届く範囲にいる人間にしか仕事を任せられないことを自覚するべきである。

仕事の定義ができれば、活用できる人材が多くなる

SLA(サービス・レベル・アグリーメント)によって、具体的に仕事の定義がなされると、安い人件費の国外にアウトソーシングするだけに留まらなくなります。これまで活用されることのなかった社内の人物や、国内の有能な人材を活用することができるようになるでしょう。

現在では、ノマドワーカーや、在宅ワーカーの存在も無視することはできません。しっかりとした仕事のゴールが示されていれば、直属の部下よりも遥かに短い時間で、高いクオリティの仕事を仕上げる人材は世の中にゴロゴロいます。地方に住んでいたり、育児で手が離せない優秀な主婦などを、もっと活用することができるので、企業にとってもメリットが大きいといえます。

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まとめとして

人口の減少は、ちょっと考えただけでも危機的な状況だと誰でもわかります。
よく言われていることですが、安心して子供を産み、育てられる環境が整わない限り、容易に出生率は上がらないでしょう。

海外にアウトソーシングすることもいい事かもしれませんが、国内の活用されていない人材をもっと活用できる仕組みづくりができれば、日本国内で経済の循環が起こって、子育ての環境が整っていくのではないかと考えます。

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