「真面目に努力していれば、いつかきっと、だれかが気づいてくれる」。この考えは、イエスであり、また、ノーだ。企業にいた私は、最後にものを言うのは実力だと思う反面、自己アピールのうまい人が、さっさと欲しいポジションを獲得していくのを目の当たりにしてきた。実力があるのなら、それに見合った、自分を伝える術を持つべきだ。
「伝わる・揺さぶる!文章を書く」より
会社に勤務する、いわゆるサラリーマンといわれる人であれば、一度はこのような経験をしたことがあるだろう。
客観的にみて、明らかに能力の劣っていたり、また優れていたとしても実力・実績ともに大差ないような同僚が、あなたを置き去りにしてトントン拍子に出世したりすることは無いだろうか?
自分と彼(彼女)との違いは何だろう?上司から・顧客からはどれほど違って評価されているのだろう?
対人関係、主に対話において抜群の強みを発揮する人達がいる。「打てば響く」というが、一つの質問に対して、その場で二つ、三つとアイデアを出す。またそういう人は反論・批評への対処も卒が無い。彼らの想像力にも敬意を払うべきだが、その能力が最も秀でている点は、数多くの対話を繰り返した上で培った対話における反射神経だと考える。
一方で、メール・手紙・企画書・報告書・エントリーシート・職務経歴書などの文書は、よく考えた上で発信することができる特性上、あなたの考え・能力や、あなたを引き上げるメリットをじっくり伝えることができる。あなたは自身を表現する文章術をもっと磨くべきである。
読み手を意識して書いているのか
本書は良い文章を書く上で、また、良い文章に練り上げていく過程を助ける意味で非常に実践的な書である。
読み手の要求から外れた所で、いかにいい文章を書いても虚しい。
この入試問題には、資料としてやや長めの文章がついている。ということは、彼女が書くシーンに少なくとも、3人の人間がいるということだ。彼女自身 資料文の筆者 問題を出した大学の人(彼女の文章の読み手) この3者の関係の中で、次のことを彼女自身の言葉で言えるようにしてもらう。
資料文の筆者が本当に言いたいことは何か? 大学側は、そういう資料文を読ませることで、自分に何を求めているのか? 結局、自分には、何と何について考え、書くことが求められているのか? 資料文を読んでから文章を書く場合、筆者に共感したり、反発したりと、つい筆者と自分の対決になりがちだが、そのやりとりをじっと眺めている大学側、つまり、最終的な読み手が何を求めているかを忘れてはいけない。
「伝わる・揺さぶる!文章を書く」より
ゴールから逆算する文章術
本書では、機能する文章として、書き始める前にまずゴールを設定して、目指すゴールから逆算するように、「情報を集め」「問いをたて」「論点を絞り」「結論に導く」ことを推奨している。
そして、機能する文章を目指す過程で最も重視しているのは「考える」こと。
自分以上にいいものを書く必要はない。しかし、自分以下になってはいけない。だからこそ、書くために必要なのは、「考える」ことだ。
「伝わる・揺さぶる!文章を書く」より
まとめとして
文章を書くときには必ず、読み手という相手がいます。
たとえ日記のような私的なものであっても、10年後の自分が読んだとき、相手はどう感じるだろうか。
卒業文集に書いた、将来の自分像とは、きっと違う人生でしょうが、(気持ちとして)恥じない自分でありたいと思います。
正直という戦略をとる。つまり、自分に忠実でありつつ、かつ人と関わることを目指す。
そのためには、厳しい文章術の鍛錬が必要だ。なぜなら、自分の正直な姿を表すところは、自分の中ではないからだ。自分の中ではない。紙の上でも、パソコン上でもない。「相手の中」だ。
「伝わる・揺さぶる!文章を書く」より