個人が自宅を売り出したら必ずチェックしたいレインズ登録の有無

住み替えや資産処分のため、マンションや一戸建てなどの自宅を個人が売却しようとするとき、不動産業者に「自宅を売ってください!」と依頼することになります。

依頼を受けた不動産業者は指定流通機構に売却物件の登録をしなければなりません。
これは他の不動産会社に来店したお客様にも物件を紹介するようにできる不動産業界のルールで、宅地建物取引業法にも明示されています。

しかし、これは業者の思惑によって必ずしも守られていないのが現状です。

レインズとは?

そもそもレインズ(不動産流通機構)とはなんでしょう?

宅地建物取引業法
第三十四条の二 (媒介契約)
七-5  宅地建物取引業者は、専任媒介契約を締結したときは、契約の相手方を探索するため、国土交通省令で定める期間内に、当該専任媒介契約の目的物である宅地又は建物につき、所在、規模、形質、売買すべき価額その他国土交通省令で定める事項を、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣が指定する者(以下「指定流通機構」という。)に登録しなければならない。

引用した宅建業法、第34条の2、7-5に記述がある「指定流通機構」が、
公益財団法人 東日本不動産流通機構
(Real Estate Information Network Systemで頭文字をとってレインズと呼ばれます)

売却の依頼を受けた業者は指定流通機構(レインズ)に物件の概要を登録しなければなりません。

売却の依頼を受けてから何日間で登録するのか?

お客様から売却の依頼を受けた場合、
依頼を受けてから遅くとも7日以内に登録を完了しなければいけません。

  • 専属専任媒介契約
  • 不動産会社は媒介契約締結後、5日以内にレインズへ登録しなければなりません。
    1週間に1回以上文書による業務の処理状況を報告しなければなりません。

  • 専任媒介契約
  • 不動産会社は媒介契約締結後、7日以内にレインズへ登録しなければなりません。
    2週間に1回以上文書による業務の処理状況を報告しなければなりません。

    REINS TOWERより引用

    登録をしないのは売主にとって不利益

    “売りに出したからには早く売却して欲しい”というのが売主様に共通した心情です。
    一日でも早く売れるためには“見込みとなるお客様が多ければ多いほど良い”というのは分かるでしょう。

    しかし、売却の依頼をした不動産業者にどれほどの集客能力があるのか?
    これを客観的に判断するのは難しいことです。

    専任媒介は依頼した特定の一社がレインズを介して広くお客様を紹介する


    依頼したA不動産だけではなく、Bホーム・Cハウス・D住販など・・・
    多くの不動産業者からお客様を紹介してもらうシステム。
    それが指定流通機構(通称:レインズ)に登録するメリットです。

    しかし、業者によってはレインズへの登録が全くされないケースもあります。

    業者はなぜ登録をしないのか?

    なぜ不動産業者は依頼を受けたにもかかわらず、売却物件の登録をしないのでしょうか?
    これは不動産業者が受け取る報酬体系に関係があります。

    不動産業者は基本的に成功報酬です。
    いくら沢山売却の依頼を受けてもその時点で報酬をいただくわけには参りません。売却の依頼をいただいた物件に買主がみつかり、無事に売却できた場合に売主から報酬を受け取ります。

    また、物件を買いたいというお客様(買主)からは、希望の物件がみつかり売買契約が成立すれば、買主から(売主からとは別に)報酬をいただくことができます。

    つまり、一件の売買契約により、(売主から・買主から)二つの報酬が発生します。
    売却を依頼された不動産業者は、自社で買主を見つけることができれば、二つの報酬を一人占めできます。
    しかし、レインズに登録して他社が買主を見つけた場合は二つの報酬の片方だけしか得られません。

    売主から一社だけに専任で売却を依頼された場合、他の不動産会社はその売却物件が存在することことさえ分かりません。業者はこの優位な立場を悪用して、他の業者から買主を紹介させないためにレインズへの登録をしないわけです。

    登録証明書を発行・悪用するケースもある

    レインズはインターネットを利用した不動産業者専門のデータベースのため、一般の消費者がこのサイトを閲覧することはできません。
    気をつけなくてはいけないのは一般消費者が閲覧できないことを悪用する業者も存在します。レインズに売却物件の登録をして、登録証明書を発行すると、すぐに登録を取り消してしまいます
    依頼された業者は証明書を売主様に見せて安心させると言う訳です。
    これでは、いつまで経ってもその業者以外から、お客様が案内されることはありません。

    注:レインズの運営する「REINS TOWER」は一般消費者向けのサイトで閲覧が可能です。物件の登録状況は分かりませんが市況など大まかなことが把握できます。

    登録をしない業者に、個人の売主はどう対処すればいいのか?

    まずは依頼した不動産業者に言ってみるのが良いでしょう。悪意はなく、何らかの手違いで登録されていないこともあるからです。
    言い方としては「知り合いの不動産会社に調べてもらったんですが、レインズへの登録がされていないようなので、登録をお願いします」と伝えれば良いでしょう。

    何度かお願いしても登録されないとき、もしくは登録されたかどうかが分からない場合は、管轄する都道府県の都市整備局に相談するのが賢明です。不動産業者としての免許はこの機関を通じて発行されているため、一定の効果があるでしょう。

    まとめとして

    以前、賃貸の担当者が物件隠し(他の担当に紹介させない)で揉めていたことを思い出します。
    その場合は、他社の不動産会社はおろか、社内にも(紹介できる)空室を公開せず、自分ひとりの売り上げにしようと必死に隠していました。

    隠していた担当者に向かい、
    「物件はオーナー様(所有者)のものでしょ!」
    「あなたは担当しているだけ!」

    女性マネージャーの怒気を含んだ声が店内に響いていました(恐)

    法令順守が厳しく言われることの多い現代、不動産業者も少しずつ変わり始めてきています。しかし一部の業者は依然として自社の利益を最優先する傾向があります。

    企業としては利益を追求することは当然です、事業を継続していく為に色々と戦術をめぐらすこともあるでしょう。
    しかし、それがお客様の不利益になるようなことならば、それが長く続くことはないと考えます。